九州大学大学院医学研究院泌尿器科学分野

病気と向き合う

受診される方へ

【病気と向き合う】前立腺癌
 ~壮年期以降の男性の癌~

前立腺とは何ですか

最近、新聞やテレビで前立腺肥大症や前立腺がんという病名をお聞きになることが多いと思います。前立腺は男性の精液の一部をつくる臓器です。もちろん男性にしかありません。正常成人では栗の実ぐらいの大きさで、尿がたまる膀胱の出口のすぐ下にあり、中を尿道が通っています。

ふえている前立腺癌

前立腺がんはこの前立腺から発生するがんで、壮年期以降に多い高齢者のがんです。その頻度は人種差・地域差が大きく、欧米では高くアジアでは低いのが特徴でしたが、日本では人口の高齢化、生活習慣の変化などから、近年患者さんの数が増加しています。

どのような症状ですか

前立腺がんの初期にはほとんど症状がありません。最初に自覚する症状は、尿の勢いが弱い、排尿後に尿が残った感じがする、夜間にトイレに起きるなど排尿に関係する症状が多いのですが、これも良性の病気である前立腺肥大症と見分けがつかないことがほとんどです。さらに進行すれば尿に赤い血が混じったり骨に転移して頑固な腰痛などがでてくることがあります。

診断はどのようにしますか

前立腺がんの診断は、肛門から指を入れて前立腺をさわって調べる経直腸的前立腺触診、血液検査である前立腺特異抗原(PSA)測定、前立腺超音波検査を行い、さらにがんの疑いがあれば前立腺生検検査を行います。

特にPSA 検査は、症状の全くない早期の前立腺がんのスクリーニングとして有用で、採血だけですむので患者さんの負担も少なくてすみます。

前立腺超音波検査のうち肛門から検査する経直腸的超音波検査が前立腺全体の観察に優れており、またがんの場所を診断することも可能なことがあります。当科もこの方法で検査を行っています。

前立腺生検検査はおしりに簡単な麻酔をしてあと、超音波で位置を確認しながら直腸または会陰(陰嚢と肛門のあいだのまたの部分)から細い針で前立腺の組織を少し取る検査です。

当科では会陰よりこの検査を行っています。会陰からの方法は従来の直腸からの検査に比べて、早期がんが多い PSA 4 ng/ml 以上10 ng/ml 未満の範囲にある患者さんで前立腺がんの診断がより正確に行えることがわかっています。また合併症のなかで直腸からの出血は無くなりました。

治療はどうしますか

がんの広がり(転移の有無など)やがんの悪性度でも変わってきますが、現在のところ早期がんに対しては、70歳ぐらいまでの方には手術で前立腺を摘出する根治的前立腺全摘除術をお勧めしています。他に放射線治療や内分泌治療、さらに抗癌剤による治療もあります。

いずれの場合も治療を始める前に病状を十分ご説明申し上げ、患者さんの希望、年齢や社会生活の程度なども加味して、患者さんの理解が得られた上で治療を始めます。

最後に

前立腺がんは日本人でも増加しているがんです。ほとんど症状のない早期の前立腺がんは一方では治癒の望める段階でもあります。前立腺に対するがん検診が行われている地域もありますが、全国的ではありません(福岡市では年に二回、医師会による前立腺がん検診が行われ、年齢や保険の種類で制限はありますがPSA検査を受けることができます)。

前立腺がんの早期発見のため55歳を過ぎたら前立腺がんの検診の意味で一度PSA検査をお受けになることをお勧めします。 また前立腺がんに限らず、尿の勢いが弱い、排尿後に尿が残った感じがする、夜間にトイレに起きるなどの排尿症状を自覚したときは放置せず、早めに専門医を受診されることが重要です。

早期前立腺癌に対する小線源治療についてはこちら